- 人間の街 公共空間のデザイン
- ヤン・ゲール 訳:北原理雄
レビュー
学生時代に良く読んでいたのがヤン・ゲールの「屋外空間の生活とデザイン」、20年後に書店でこの新しい本を手に取った。根底に流れる思想は変わらずに、街にアクティビティを生み出すデザインについて、良い事例、悪い事例が写真で分かりやすく示されると同時に、長年の調査から得られたデータもまた分かりやすく示されており、都市デザインやまちづくりに関わる人向けのまさに教科書である。
建築や都市をデザインするということは「人」のための空間を作ることであり、内部だけでなく誰もが触れる外部の公共空間にこそ重きが置かれるべきである、という当たり前で、深くて、現実社会ではなかなか難しいことをテーマに、街の滞在時間、目線の高さの気候、「見る,聞く,話す」のコミュニケーション環境、安全、健康、持続可能、生き生きとした、といった生活体験とリンクした多様な角度から、街のデザインのあり方について論じている。
まちづくりという言葉がソフトや活動だけを示していたり、都市デザインが企業や経済論理を追求するための装飾やテクニックなのではなく、この本に記された街を作る基本作法であり本質であるという共感を広げていきたい。
レビュー:佐藤 芳治
- 項 数:273ページ
- 仕 様:
- 発行日:2014年3月15日
- 出版社:鹿島出版会
- 定 価:3,200円(税別)