【レポート前編】話が弾んだリズムトーク
どこか他人事になってしまいがちな「福祉」の話にフォーカスを当てたトークイベントを、11月のプレジャーマーケットに合わせて開催しました。大阪で25年間も福祉業界に携わるベテランの江部成治さんと、在仙でクリエイティブと泥臭さを併せ持ち各地のまちづくりの現場で活躍するイワマユキさんをゲストに迎え、当法人の豊嶋が進行のもと参加者の方々も交えたアイデアセッションを展開し、前半は福祉業界のこれからについて、後半は福祉とまちの関係について、話を深めていきました。
豊嶋 福祉施設をご利用される方の変化など長年で何か起きていることはありますか?
江部 以前まで福祉は行政サービスの認識があって、従事する人間に対して利用者様は「兄ちゃん、姉ちゃん、良くやってくれてるねぇ」という接し方でしたが、最近は支払っている費用に対するサービス対価を求めているというのが利用者様と接する中で感じています。私たちの事業所ではスタッフが接客という意識で働いてもらえるよう指導しています。
豊嶋 経営陣とスタッフとの関係性も大きく変わってきているような印象を持ちます。かつては3Kと言われる仕事に福祉も入っていましたが、今では見え方が大きく変わってきているのですね。
江部 ただ決して3K的な仕事内容が無くなることはありません。2025年には団塊世代が後期高齢者になり介護の必要な方が急速に増えることが予想されています。法人設立時は訪問介護でスタートしましたが、その後にデイサービス、ショートステイ、特別養護老人ホームを事業展開させ、介護保険などに関することを一緒に話し合っていくケアプランセンターも設けているほか、リハビリにも着手し利用者様が出来なくなったことを出来るようにするサポートをしています。
豊嶋 つまり要介護認定の比較的軽い方が重度化しないようなこともされてるわけですね。これから高齢化が進む上でとても大切な視点です。また訪問介護から始まっているのは福祉業界として珍しいのではないでしょうか。
さて、今回は「アイデアを発想」というのをテーマにしていますので、ゲスト・参加者を交えたセッションに入っていきたいと思います。江部さん、みんなで考えるお題を出していただけますでしょうか。
江部 はい。今後の需要が大きくなるということは働き手もそれだけ必要になってくるので、次の世代にいかに関心を持ってもらえるかは福祉全般での喫緊の課題とも言えます。そこで「なりたい職業ランキング」を持ってきました。この上位に福祉が入るためにはどうしたらいいのか、何かできることはあるのか、考えていただきたいと思います。
豊嶋 なるほど!憧れの職業とはなりづらい福祉ですが、首都圏では福祉×クリエイティブとか超福祉といった切り口でイメージアップを図る取組みがあることを耳にしたことがあります。皆さん、良いアイデアはありますでしょうか。
参加者① スカンジナビア半島は福祉の先進国として有名なので参考にするべきかと考えています。スウェーデンでは介護施設が小学校に隣接していて、子ども達がおじぃちゃんおばぁちゃんに会いにいくような感覚で介護施設に遊びに行っているのです。そこで働いている人の姿も見ますから職業の選択肢に入りやすいですし、その人たちが社会貢献している意識が強いこともあり満足度が高い働き方をしているのでキラキラして見えるんだと思います。
豊嶋 物理的な距離感を近づけて、ある意味で強制的に子ども達に触れさせる。良い視点ですね。
イワマ 今のお話を聞いてて思ったのですが、私が子ども達と接している経験からすると、心理的な距離も近づけてあげる必要があると思います。例えば自分の区かどうかをとても気にしていて、区をまたぐと親に連れて来られないといけないと教えられているので、そんなことが気にならない環境が必要だと感じています。子どもが直感的に惹かれるようなものとして、駄菓子屋や動物などが挙げられます。
豊嶋 具体的なアイデアもありがとうございます。なんだかイメージが湧きますね。
参加者② ランキングを見ていると上位に入る条件として3つの傾向があるのではないかと推察します。一つは「かっこいい、憧れる」要素で、二つ目は「稼げる」こと、そして「安定」している点であり、後者2つは大人が持つイメージから伝わる部分が大きいと思います。私は自己表現を出来ているかどうか、またそのやり取りがあって楽しいと思うところに、「かっこいい、憧れる」側面が表れると考えているので、福祉の働き手がそこにリーチできる環境を整えてあげることが重要だと思います。
イワマ そういう意味では福祉が職業というものに括れなくなってくるんじゃないかと思っていて、私は副業をいくつもしてますし、福祉に従事しながら他のことをやっていくのもアリだと思います。これからの働き方は“社会貢献の福祉”と“自己表現の〇〇”という形が広がっていくといいのではないでしょうか。
参加者③ 私も上位を目指すのではなく福祉はやって当たり前のものとして捉えていくものだと思うので、多くの子ども達に体験を通じて福祉を知る機会をつくってあげて欲しいです。例えばキッザニアに福祉サービスのブースがあったら知る良いキッカケになるのではないでしょうか。
豊嶋 セッションが盛り上がってきたところで、参加者の方からもアイデア発想に投げ込んでいただく課題を放り込んでいただきたいと思います。福祉に携わる方もそうでない方も何かございますか。
参加者④ 結局のところ話題は同じになってしまうのですが、私は障がいを持っているので教育学校でお話をする機会があり、聞いてみると、障がい者と接したことや福祉に携わったことがほとんど無いとの答えに大変驚きました。そういった人たちが子ども達の先生をしているわけですから。そこでの繋がりから小学生と交流できる機会があって、彼ら彼女らに私の介助をしてもらいながら一緒に時間を過ごして、とても楽しかった経験があります。じつは今でも交流を続けているので、社会と福祉の接点をもっと増やしていただけると嬉しいです。
豊嶋 これからの子ども達が社会全体を知っておくためには、福祉・介護・障がいにしっかりと接する仕組みが必要ということが見えてきましたね。民間にも出来ることが色々ありそうですが、江部さん、いかがでしたか。
江部 色んなアイデアをいただきありがとうございました。教育の方にアプローチしていけるよう努力していきたいと思います。
豊嶋 それでは後半に入っていきたいと思います。
レポートの後半は次の記事でご紹介します。
リズムトーク
〜福祉と介護の課題解決アイデアを発想〜
日時|11月24日(日) 13時30分〜15時頃
場所|青葉の風テラス(地下鉄東西線・国際センター駅2F)
<主催> 都市デザインワークス
<共催> リズムタウン仙台(社会福祉法人基弘会)
<後援> 仙台市