都市デザインワークスのホームページ

スタッフノート

街歩きで発見したこと、活動を通じて感じたこと、まちづくりに関わる話題など、スタッフそれぞれの目線で書くエッセーです。

前のノート

2008年7月9日

多賀城市「歴史の道・詩都景観形成事業ワークショップ」を振り返って1

今年1月から運営を支援してきた多賀城市「歴史の道・詩都景観形成事業ワークショップ」を、関係者にもコメントをいただき、数回にわたってふりかえってみたいと思います。

最初は、この事業の協働での推進の“仕掛人”である、多賀城市地域コミュニティ課市民活動推進係の吉田さんに、これまでの経緯を振り返っていただきました。

◇◇◇◇◇

市民の参画と協働で進める「歴史の道」の経緯

■「歴史の道」は「みんなの道」、みんなの道はみんなで決めよう!
 多賀城市には、歴史的資源と豊かな自然環境が残されています。特に特別史跡多賀城跡は、平城京、太宰府とともに国の三大史跡と呼ばれており、奈良・平安時代における東北地方の要として栄えたところでした。
 このようなことから、多賀城市では市内のいたるところで、「古代・多賀城」を意識したデザインによる建築物や工作物等を整備してきましたが、その歴史や価値が十分に活かされていない現状にありました。
 このため、地域、NPO、企業や行政など、多様な主体の参画によって地域資源の再発見とその活用を図ることを目的とし、平成19年秋、歴史の道・詩都景観形成事業に着手したのです。

■事業の推進方針は市民参画と協働だけど…
 従来まで行われてきた多くの行政事業では、計画から実施までの間に市民が参画できる機会は限られていました。ほとんど行政側が作成した計画によって事業が進められてきたといってもいいでしょう。
 しかし、歴史の道・詩都景観形成事業は、市民の参画と協働を事業推進の基本理念とし、事前調査や企画・計画づくりの段階から市民のみなさんと共に行うことにしました。けれども、市民参画や協働という手段によって事業を進めることにはしたものの、どのようにして市民の参画を促し、どのようにしてアイデアや意見を募ったらいいのか、提案された様々な意見をどのようにして集約し行動計画を作ればいいのか、分からないことばかりでした。悩んだあげく、そもそも市民参画や協働による「まちづくり」とは一体どのようなことなんだ?取り組む意義ってなんなんだ?という壁にぶち当たってしまったのです。平成19年夏の終わりのことでした。

■僕らにはなかったスキルとノウハウ
 最近、市民参画や協働という言葉や文字は、行政内でもよく目にするようになりました。しかし、これらのほとんどは、スローガン的な言葉として用いられており、本質を理解したうえで具体的取り組みが行われているとは言い難い状態でした。この事業を担当する我々地域コミュニティ課でさえ、どのようにして事業を推進していくべきか悩んでいました。ハッキリ言って行政職員にとっては、今まで慣れ親しんできた業務運営プロセスとはその全てが異なる取り組みです。本来まちづくりの中心的役割を担うはずの行政職員が、市民参画の推進や協働という新たな手法によるまちづくりのスキルもノウハウも持っていなかったのが本当のところでした。
 このようなことから、市民参画によるまちづくりや、政策提言活動を実践しているNPOの情報を探しに仙台市市民活動サポートセンターへすぐさま飛んでいったのです。そこで「都市デザインガイドブック せんだいセントラルパーク2006」という一冊の本に出会いました。冒頭の市民提案型まちづくりの実践に向けて〜市民がつくる「まちづくり計画」のススメ〜を読んだ瞬間「これだよ、これなんだ、僕らがやりたかったことって…」。すぐさま本を購入し、次の日には都市デザインワークスに連絡を入れたのが今回の業務の始まりでした。

■都市デザインワークスに期待したこと=ファシリテーター
 多様な主体の参画によって共に公共を創り支える「新しい公共」という視点でまちづくりや地域づくりを進めていくことがこれからは必要だと感じています。けれども、行政と市民という従来の関係性の中で会議やワークショップを開催すると、行政側に対する要望に終始したり、行政側からの一方的な説明会になってしまうことがよくあります。
 しかし、今回の事業では地域の構成団体が対等な立場で参加し、「史跡を活かしたまちづくりとはどんな取り組みが必要なのか」ということについて互いに理解を深めながら知恵の交換をすることが目的であったことから、行政が会議を主催・進行するよりもファシリテーターを外部から招くこととし、NPO法人都市デザインワークスに携わっていただきました。

◇◇◇◇◇

 私たちに期待された「ファシリテーター」とは、一体なんでしょうか?「協働コーディネーター」を提唱している世古一穂さん(特定非営利活動法人 NPO研修・情報センター代表理事)は、「ファシリテーターの技術と能力」について、次のように記しています。
『一口にファシリテーターといっても、具体的な役割や機能は様々である。ファシリテーターは単なる司会者ではない。ファシリテーターを直訳すると「援助者・促進者」という意味になる。新しい物事を生み出すときの「助産婦さん」のような役割、いわば水先案内人である。
 参加型の会議やワークショップにおけるファシリテーターの役割は、専門的知識を伝えるものでも、自分の意見でリードするものでもない。会議やワークショップの参加者が対等な立場で意見を出し合い、より民主的に会議が進んでいくよう、様々な工夫を行い、会議やワークショップをスムーズに進行していく役割である。会議やワークショップの具体的な内容の善し悪しを判断するのではなく、中立的な立場で会議の進行を行っていくのがファシリテーターである。水先案内人として参加者全体に気を配りながら相互の関係を活性化させ、意識されていなかった潜在的な問題や可能性に参加者が気づけるようにするのだ。「意見をコントロールせず、進行をコントロールする」、これがファシリテーターの鉄則である。ちなみに、ファシリテーターに必要な中立的な態度とは、ものごとすべてを相対化して自分の意見をもたないこと、意見をもたずに中間に位置することとは違う。自分の意見や価値観はしっかりもちながら相手との違いをはっきりさせた上で相手を受け入れることにより、協働するプロセスを生み出そうという態度である。』

なかなか難しいですね。単なるワークショップの「司会者」ではなく、中立的な立場で、参加者の想い(潜在的なニーズも含む)を引き出し、それら多様な意見を相互に関係づけできるよう整理しながら、進行をコントロールする専門職といったところでしょうか?当然そのためにワークショップのプログラムを設定し、それに必要な資料の作成や情報提供なども、ファシリテーターの仕事と考えられます。ワークショップの質を高めるためには、このファシリテーターの役割が重要だということが良く分かりますね。(榊原)