まちを共に創る

六郷東部地区まちづくり

東日本大震災の津波により甚大な被害を受けた、仙台市若林区の六郷東部地区。震災後にコミュニティの弱体化が懸念される同地区に於いて、地域と行政との協働による復興まちづくりの推進をサポートした。

六郷東部地区まちづくり

六郷東部地区と3.11

井土・三本塚・二木・種次・藤塚の「六郷東部地区」は、良質なお米や野菜が育つ田園地帯である。井土浦や名取川、海岸の松林、個々の屋敷の居久根など、豊かな自然に囲まれるまちであった。

震災の津波によって地区の全域が浸水してしまい、ほとんどの家屋が浸水・流出し、100名を超える方々が犠牲となった。藤塚全域と井土の一部は災害危険区域に指定され、集団移転や自主移転で地区を離れる世帯が見られた。2015年12月の現地調査では、現地再建世帯は198世帯であった。これは震災前の世帯数の4割程度に減少した世帯数であった。

地域情報の調査分析と「まちづくり部会」のサポート(2014年度〜)

世帯数の極端な減少によるコミュニティの弱体化が懸念されたことから、若林区と共に都市デザインワークスも六郷東部のをサポートすることになった。 準備段階として、地域の基本情報の調査・分析・整理を行い、地元の方々との意見交換を行った。

その後、これからのまちづくりを話し合う「まちづくり部会」がスタートすることになり、進行、記録、資料の提示、のファシリテートなど、様々な形でまちづくり部会をサポートした。

部会では、地区の歴史を振り返りつつ、暮らしていて不安なことや、地区をより良くするために必要なことについて、世代や町内会の枠を超えて話し合った。
ワークショップ形式で話し合いを重ねながら、今後のまちづくりのあり方を検討し、これから自分たちで出来そうな実践活動のアイディアをまとめた。

地域情報の調査分析と「まちづくり部会」のサポート(2014年度〜)

東六郷小学校の跡地のデザイン案をまとめる(2016年度)

六郷東部地区のコミュニティの中心には、いつも東六郷小学校があった。そんな東六郷小学校も、震災の津波による被害を受けたことや、児童数が減少したことを理由に、2017年3月31日をもって閉校することになった。

東六郷小学校の跡地について、どんなことができる場所になると良いか、部会を中心に検討を行った。
検討を重ね、「小学校の面影が感じられる」「様々な世代が活動し交流する」「コミセンとともに地区の拠点となる」というコンセプトをまとめ、その上で具体的なデザインの検討を深めた。

まとめたデザイン案は仙台市に提言したが、ちいきからの提言を受けて、市では広場の設計を地域のデザイン案を基に進め、2021年4月に「東六郷コミュニティ広場」がオープンした。

参考:仙台市若林区「東六郷コミュニティ広場」が完成しました
https://www.city.sendai.jp/waka-shinko/toubu/higarokucomihiro.html

東六郷小学校の跡地のデザイン案をまとめる(2016年度)

「六郷東部ふるさと交流祭」開催(2017年度〜)

このころになると、生活が少し落ち着き始めたからか、交流の機会を望む声が聞かれるようになった。
特に「小学校がなくなると行事もなくなり、集まる機会がない」「移転をしたけれども、ふるさとに集まりたい」という声が聞かれた。

こうした状況を受けて、地元5町内会と、地元で活動する団体が実行委員会を立ち上げ、交流企画の準備をスタート。
若林区ふるさと支援担当と都市デザインワークスが、企画検討や準備に関する支援を行った。

2017年秋、地域にゆかりのあるひとが集まって交流を深めることを目的に「六郷東部ふるさと交流祭」 が開催された。
その内容は、地元の方々が得意なことを披露するステージ、地元の女性グループ「かあちゃん'ず」のカフェコーナー、昔遊び体験、わら細工体験、産直市場、紹介ブースなど。約 300 人が来場し、久しぶりの再会を喜ぶシーンが沢山見られた。

翌年からも開催は継続されており、実行委員会や、出店や出演で参加する人も少しずつ増えている。
2018年度をもって都市デザインワークスの支援業務は完了したが、このようなイベントへの参画をきっかけに「実践型」の人が増えていき、地域の魅力創造・課題解決に向けた様々なアクションが展開されることを期待している。

「六郷東部ふるさと交流祭」開催(2017年度〜)

地域資源の掘り起こし 〜井土メダカをテーマにしたイベントの企画〜

かつて井土付近に生息していた、固有の遺伝子をもつ「井土メダカ」。
津波によって地域から姿を消してしまったが、偶然にも宮城教育大学が研究用に採集していたことで、奇跡的に絶滅を免れたという。「奇跡のメダカ」と呼ぶにふさわしいメダカである。

2019年2月、地域の新たな資源として井土メダカに着目し、井土メダカに親しむイベント「ひがろくメダカカフェ」を開催した。当日は、専門家と里親が井土メダカとの日々の暮らしの魅力を語ったり、メダカの小物づくりのが行われたりした。

現在、宮城教育大学・八木山動物公園・若林区役所、そして地元住民が連携し、井土メダカの繁殖と保全に向けた取り組みを進めている。
メダカの里親になるひとも増えており、メダカを介して地域が繋がっていくようなポテンシャルを感じている。
そして、地域外からも井土メダカへの注目は日々高まっていることから、井土メダカが地域のシンボルとなり、新たな交流が生まれていくことを楽しみにしている。

参考:せんだいTube  「ふるさと」と「井土メダカ」をつなぐー震災から10年の物語
https://www.youtube.com/watch?v=4dcrtipqZlA

地域資源の掘り起こし 〜井土メダカをテーマにしたイベントの企画〜