- エリアマネジメント 地区組織による計画と管理運営
- 小林重敬 編著
レビュー
タイトルにある「エリアマネジメント」とは、地域における良好な環境や地域の価値を維持・管理・向上させるための様々な活動のことです。人口減少・成熟社会に突入し、つくること(開発)だけでなく、その後の維持・管理・運営(マネジメント)にも配慮した都市づくりが必要だという意識の高まりや、地域間競争の進行により、地域住民・事業主・地権者等が主体となって地域の魅力づくりに取り組もうとする動きが見られるようになりました。これは、大都市のみならず、地方都市の中心部においても、活性化のための活動が展開されています。
欧米諸国ではすでにこうした取り組みが見られます。例えばアメリカでは、BID(Business Improvement District)という制度があります。特定のエリア内から強制的に負担金を集め、その資金で地区内の清掃や防犯活動、人が集まる中心部をつくるためのプロモーション活動やニュースレターの発行、イベントの開催などを行なっているそうです。
本書では、日本における取り組みが紹介されており、そのひとつに大手町・丸の内・有楽町地区があります。オフィス街としての長い歴史を持つ大手町・丸の内・有楽町地区では、地権者がまちづくりを考えるための組織として、1988年に「大有丸地区再開発推進協議会」が発足しました。その後、行政を巻き込んだまちづくり懇談会が設立され、2000年にまちづくりガイドラインを策定、運用を行なっています。そして2002年に、人々の交流の機会を創出することを目的にNPO法人大有丸エリアマネジメント協会が設立。この3つの組織が相互に連携しながら、ハード面のみならず、地区内の美化・緑化、パブリック空間の活用によるイベント、エリア循環バスの運行、オープンカフェの実施などのソフト面での活動に取り組んでいます。
この他にも、汐留、六本木等の大都市都心部におけるものから、金沢、松江、高松といった地方都市でのエリアマネジメントの事例を紹介しています。その活動内容のみならず組織設立に至る経緯から組織運営、抱えている課題についても記述されており、長期的に街を維持し、街の魅力を向上し、街への愛着を増すための新たな取り組みについて考える上で多くの手がかりを示しています。
レビュー:田川 浩司
- 項 数:253ページ
- 仕 様:21 x 14.8 x 1.8 cm
- 発行日:2005年4月10日
- 出版社:学芸出版社
- 定 価:2,800円(税別)