- ベルリンうわの空
- 香山哲
レビュー
舞台はドイツ・ベルリン。
著者がベルリンに移住して、ぼーっとしながら毎日を過ごし、その中で感じたことを、独特のイラストで綴った作品です。
私たちの毎日は、そういつもいつも、何か大きな出来事が起こるわけでもないですよね。何もない日のほうが多い。
そんな「何もない」毎日ですが、地域や社会の大小様々な課題と隣り合わせにもなっています。気づいていないこともあれば、気づいているけれど目を背けたり、(勝手に)諦めていることもあったり。
この漫画の主人公は、そうした地域や社会の課題に目を向けて、自分なりに思考し、言語化していきます。「こんな風に暮らしたいよね」「これはおかしいんじゃないか」「どうにかできないのかな」と。
忙しさを理由に、私たちがどこかに放置したくなるようなことに、真摯に向き合う様が、とても心地よいです。
いつもぼーっとしてるけど、思考停止しない主人公を見ていると、自分の暮らす街や社会の出来事って、日常と地続きなんだよなと、そんなことを強く感じます。
著者のnoteにて試し読みができるようですので是非。
https://note.com/kayamatetsu/n/nf70bd7b5ec92
新型コロナウイルスによって外出を控えていたころによく読みました。
人と会う機会が減り、街から人が消えていて、なにか自分と社会との接点が感じにくくなって、モヤモヤしていたころです。
読みながら、たとえ名前も知らなくても、顔をあわせることがなくても、自分は多くの人と日常を共有しているんだ---視界が開けた感覚を覚えています。
そして、誰かが困っていれば助けたいし、ちょっとおかしいという声が上がれば耳を傾けて、できることをしたい。なにより、日々思考停止しない!そんなことを強く思いました。
ちなみに仙台だと、花京院にある『ボタン』さん、八幡にある『曲線』さんなどの独立系書店にて入手できると思います。ぜひふらりと訪れてみてください。
レビュー:田川 浩司
この本を参考にしたプロジェクト
- 項 数:168ページ
- 仕 様:B6判変型
- 発行日:2020年
- 出版社:イーストプレス
- 定 価:1,000円(税別)