ニュース一覧

ニュース一覧

都市デザインワークスからのお知らせです。

サポーターズMT記録「市の音楽ホールの建設に関して勉強しよう」を公開します

当法人では、事務局とサポーター会員が集まり、交流や情報交換を図りながら、せんだいセントラルパークプロジェクトの推進に向けた意見交換をする「サポーターズMT」を月に一度開催しております。
5月のサポーターズMTは「市の音楽ホールの建設に関して勉強しよう」をテーマに、ゲストに坂口大洋先生をお招きして開催しました。

音楽ホールについて幅広く解説をいただき、理解が深まりました。坂口先生、お忙しいところありがとうございました。

当日の内容を事務局でまとめましたので、ホームページにて公開します。
仙台における音楽ホールの位置づけから、日本各地の近年の動き、県民会館との役割分担、検討委員会で提示された候補地の話、ホールとの話などなど。
ぜひご一読ください。トップページのDATAからもご覧いただけます。

190522サポーターズMT記録(音楽ホール)

*追記:PDFを公開していましたが、スマートフォンで見やすいように、以下にテキスト全文を掲載します。

UDWサポーターズMT – 2019年5月
テーマ:市の音楽ホールの建設に関して勉強しよう

ゲスト:坂口大洋先生
仙台高等専門学校建築デザイン学科教授、仙台市音楽ホール検討懇話会 立地検討専門部会委員

■仙台市における音楽ホールの位置付けについて
・音楽ホールの建設を検討し始めたのはおよそ30年前。特に3.11東日本大震災後に音楽ホールへの市民の期待が高まっている。(参考:兵庫県では、西宮に復興の象徴としてホール(兵庫県立芸術文化センター)がつくられている。)
・音楽ホール建設に向けたスタディは敷地や目的が幾つか変更してきているが継続的に行われてきている。

■日本各地の近年の動き
・仙台市は30年くらいずっと“2,000席の音楽ホールをつくる”ことを考えてきているのだが、社会情勢はこの30年で変化している。また、東北や関東などの周辺環境で施設整備が進んでいる。石巻、山形、秋田、水戸、高崎などは2000席のホールもあり、広域で見たときにホール事情がこの数年で変わる。
・これから仙台市が育てたい文化は何なのか?仙台市の文化政策の全体像をもう少し整理する必要があるかもしれない。
・良いホールは人が育つ。例えば、世田谷パブリックシアターは人材(出身者)を多く輩出している。もし、新しい音楽ホールがインキュベーションも担うとしたら、2,000席のホールをつくる意味があると思う。
・館長を誰にするか、というのも大事な点。意外な人を据えると面白いのでは。
・大分、福岡は、都市政策の中で文化施設や場のあり方を考えている。文化政策は九州に見習うべきところが多い。

■2,000席の音楽ホールをつくって、ちゃんと利用されるの?
・あくまで推測だが、年間75〜80%の稼働率があるのでは。
・自主事業と貸館の割合については検討が必要。どういった人に運営させるかで変わってくるだろう。
・一般的な年間運営は、1㎡あたり約2万円程度、全体の規模と経費はある程度相関する。ホールの利用と全体の経費の関係は、より詳細なシミュレーションが必要。

■音楽ホールができて市民会館がなくなると市内のホール事情に影響は発生する?
・イズミティなど市内の大規模な施設の利用はある程度影響する。少なくなるのでは。
・2,000席になることで、現在市民会館を利用している“イベント性の高くない中小規模の利用”(例:吹奏楽コンクール)場所が変化するのではないか?音楽ホールの検討と同時にそもそも仙台市民会館の今後の在り方も検討すべき課題ではある。
・これまで中ホールを利用していた団体(例:劇団四季)でも、埋まると判断すれば2,000席のホールでもやる。
・劇場空間においてステージとの距離が20m以上となると身体表現は厳しいので、演劇向けに500席くらいのホールが市内にあると良いと思う。現在の新ホールの構想も2000席と同時に500席程度のホールが検討されている。

■県民会館も新設されるので、一緒にひとつのホールをつくるというアイディアは?
・以前は一緒に作るという構想が検討された時期もあったが、現在はその可能性は極めて低い。
・仙台市には仙台フィルがあり、そのフランチャイズの在り方もその検討の与条件となっている。
・県民会館の新設については、予想よりも検討のスピードが早い。その分、充分な議論や検討がされているのかは少し疑問である。
・そもそも県民会館を建て替える必要性と、県が地域文化の多様な活動を支えていくという観点では、2000席のホールをつくるという選択が本当に良いのかは、もう少し多様な選択肢の上で議論すべきではないか。
・例えば、新しい県民会館で人材を育成して県内各ホールに派遣するなど、人材育成のアートセンターのような場を構想するというのもあるのではないか。
・全くの机上の想定だが、10年以内くらいに仮に仙台市も音楽ホールをつくり、県も2,000席のホールをつくった場合、仙台市内の既存のホール以上に、仙台市以外の県内の他のホールの運営が難しくなるのでは?

■市の音楽ホールは県民会館とどう差別化(役割分担)されるとよいの?
・かつては音響性能などでホールの差別化が図られることがあった。しかし近年は音響設計のレベルが格段に上昇しており、ホールの差別化は難しくなっている。
・音響以外の方法で差別化を図れるとよいのでは。運営や自主事業のプログラム、値段、周辺との連携、プロモーションなどもある。
(サポーターから、座席の座り心地がよい、トイレ数が充実といったことでも差別化は図られそうとの意見あり)

■2,000席ではなく1,500席のオーケストラ専用ホールに方針転換するというのは?
・県が「2,000席のホール」を「早くつくる」ことを目的に進めていくのならば、市は1,500席で良質なホールをつくるという考え方はあるかもしれない。仙台フィルの編成や方向性にも依る。

■検討委員会で提示された候補地について
・高さ制限がある場所も含まれているため、現実的には音楽ホールの建設が可能な候補地は限られている。
・委員会では「将来的に仙台のまちがこうなってほしい」という議論をした上で候補地の評価をしている。ただし、候補地は最初から9箇所に絞られていた。
・音楽ホールに期待する役割の違いによって、立地選定において重視すべき点も変わってくる。
・個人的には、県民会館も市民会館もなくなってしまい、定禅寺通り界隈が衰退することを懸念している。仙台駅前の商業集積の課題や、面的なまちの拡がりを考えることも重要であると思う。
・音楽ホールと定禅寺通りや青葉通りとの回遊性について検討が深まると良い。
・西公園の場合、大町西公園駅からの接続の良さをつくらないといけない。
・仙台駅からの利便性も選定する上で考えるべき要素だが、2,000席のうちの何割くらいが遠方からの客と想定するかなど運営のシミュレーションが必要

■公園が候補地に入っていることへの反対意見について
・市役所内の連携が少しうまくいっていない点も課題かもしれない。
・音楽ホールの検討にあたって、ソーシャルインクルージョンの理念からスタートしていて、「音楽の公園」をつくりましょうという話をしてきている。
・他方、公園が“公園”としてちゃんと役割を果たしているのか、という検証をする必要はあるのではないか。また多くの文化イベントがその場を使って行われているのも事実である。両方が一つのテーブルで議論できるような場をつくることが重要だろう。

■現在の県民会館の跡地に、1,500席の音楽ホールをつくることはできないの?
・1,500席のホールは県民会館の跡地には入らない。
・県は、県民会館の土地を売って、新しいホールの整備費用を捻出するのでは。
・県民会館の跡地がどのような用途になるのかは、将来的な定禅寺通りの在り方としても重要な課題であると思う。

■ホールのボリュームについて
・音楽ホールの高さは30mになる。近年は、舞台と客席を近くするのが主流であり、そうするとボリュームは出てしまう構造になる。客席を少なくしても高さは出る。
・市が「フライタワーをつくらない」と方針転換した場合は、高さは抑えられる。
・まつもと市民芸術館(設計:伊東豊雄)のように、大きく見えない工夫はできるかもしれない。

■ホールとまちづくりについて
・ホールは日常的に滞在させることが難しい施設なので、まちとの関係性の評価が難しい。昼間は利用されない施設。そのため、ホワイエは極力作らない。
・世田谷パブリックシアターは、駅と劇場の結び方が良い。
・新潟市民芸術文化会館(設計:長谷川逸子)も良い。

■その他
・文化芸術関係からは、「現在どこにどういった劇場があるのかわからない。ユーザーとして知っておきたい。」という声を聞く。勉強会があったら良いと思う。現在のホール事情とこれからどう変わるのか、市内の施設や市周辺のホールを整理できるとよい。
・兵庫はアウトリーチを意識している。仙台フィルも、アウトリーチ部門をつくって、プロモーションができる人を入れてみては。市内を回り、地道な顧客開発に努めることが大事だと思う。
・京都は優秀なプロモーターが新たな劇場づくりを支援していて面白い。
・仙台にはちゃんとした民間のホールが必要だと思う。民間のホールが一つあると、公共のホールでは地道なことができる。
・新たな音楽ホールでは、海外のように席をランク分けしても良いだろう。色々な人が集まる仕組みをつくることが大事。

  • WORKS 最近の投稿

  • WORKS カテゴリー